「止まり木ブルース」健坊一家の面々に至福の瞬間が訪れました。
福島競馬場の七夕賞、後方待機トップハンデのクレッシェンドラヴが4角にかけて進出、直線中ほどで一気に抜け出すと、続いてブラウァス、さらに外からヴァンケドミンゴが外から伸びて来ます。
ゴール前で形勢が決まった時は「ヨッシャ!」の歓声が北品川じゅうに鳴り響いたことでしょう。
「止まり木ブルース」の快挙をこのブログで届けるのは2度目です。2016年桜花賞の的中で26万円が203万円に化けて以来です。
レースは先頭のシンハライトにジュエラーが襲いかかって並んだところがゴールでした。
1着がジュエラーなら当たり、シンハライトなら紙くず、息がつまるような写真判定を制したのはジュエラーでした。
突っ込んだ26万が203万円になりました。
「止まり木ブルース」は塩崎利雄氏による同時進行の読み物で土曜日発行の日刊ゲンダイに連載されています。
1986年からもう34年も続いている競馬小説の"金字塔"です。
東京の北品川が舞台で遊び人の健坊と彼を兄貴と慕う男たちを含む"仲間の面々が登場します。
健坊は生まれてこのかた定職についたことのない博打好きで、毎週日曜のメインレースに大金を張っています。
たまにドカンと儲かることもありますが、しょっちゅう有り金を溶かしてスッテンテンになるのです。
でもそんな時には助け舟をだす人物が現れて馬券代を工面します。
自由気ままな健坊の生き方とマネの出来ない大口の張り方がこの小説の真骨頂で、健坊と"健坊一家"の住人たちによる泣き笑いが描かれています。
今回の大的中にはホームランを呼び込んだ伏線があります。
前の週、健坊はラジオNIKKEI賞でレーンの乗るグレイトオーサー軸で勝負したものの10着で馬券はパーとなりました。
しかも水曜日に大井競馬場で行われたジャパンダートダービーで単勝1,1倍カフェファラオ頭固定の3連単に24万も入れてしまったのです。
ダイヤモンドより堅いと言われたカフェファラオはよもやの7着と惨敗、乗っていたのがまたもやレーンだったから健坊の怒りは収まりません。
ここからは小説を引用しながらです。
七夕賞の前の晩、バー「再開」に入って来るなり開口一番に「金輪際、レーンは買わないぞ」と健坊が言い放ちました。
このレーンは買わないというヤケクソ気味の一言が七夕賞の快挙につながりました。
そしてもう一つ、的中への大きな鍵がありました。実は今回、予想は健坊がしたのではなく左官屋の親方の留公に託したのでした。
もちろん1人気レーンのジナンボーは外してです。
買い目を任せた理由はラジオNIKKEI賞で5馬身ぶっちぎったバビットを留公が推していたからです。
「左官屋の親方は世を忍ぶ仮の姿で、実は名のある馬券師じゃねえかと・・・七夕賞は親方のイチ押しに任せます」と健坊。
「まあ健ニィがそうまで言ってくれるんなら、甘えて全場重賞制覇のかかっている福永祐一の⑬ブラウァス・・」と大魔神所有の7人気のブラウァスを果敢に軸馬に選びました。
そして相手に③クレッシェンドラヴ、⑤マイネルサーパス、⑪ヒンドゥタイムズ、⑫ヴァンケドミンゴ、⑭オセアグレイトの5頭60点で、これに3,000円と相手馬と金額まで一気に言ったのでした。
馬券は3連単13番1頭軸マルチ相手5頭
⑬軸相手③⑤⑪⑫⑭
3.000円✕60点 合計18万勝負です。
前夜は皆で「レーン消えろ!」の合唱だ。
〜で結んでいます。
結果は1着③クレッシェンドラヴ 3人気
2着⑬ブラウァス 7人気
3着⑫ヴァンケドミンゴ 6人気
軸のブラウァスが2着で相手も指名通りで4着の⑪ヒンドゥタイムズも買っていたので完璧な予想です。
③→⑬→⑫の3連単の配当をみて健坊たちも驚いたことでしょう。
11万1,330円。
3,000円ずつなので払い戻しの額は
333万9,900円!
おめでとう!健坊
留公さんには足を向けて寝れませんね。
(日刊ゲンダイ 止まり木ブルース
塩崎利雄 7月11日発行分より一部引用)